-----コンピュータでコミュニケーション-----

1回目

このレポートは「かながわともしび財団」季刊誌「ともしび」の97年 1年4回にわたって連載したものです。
「インターネット」という言葉を聞かない日はありません。でもインターネットはどんなものでしょう。世の中が騒ぐのだから便利なものに違いない。しかしビデオのリモコンだってむずかしいのにコンピュータなんて、こわくてさわれない。そんな方もいらっしゃると思います。

 

コンピュータは頭脳の自転車

ところで、自転車に乗れない人は少ないと思います。自転車は最初から乗れたでしょうか。初めは補助輪をつけたり家族や友達に後ろを支えてもらい、なんども転びながら上達したのではないでしょうか。きっと「自転車に乗れたら、自分が行きたいところに、歩くより短時間にそして遠くにいけるはずだ」と自分を励ましたことでしょう。誰だった最初は自転車に乗れなかった。

コンピュータも同じです。最初は誰も「乗れません」。ところが誰かに手ほどきを受けると、いままでできなかったことができるようになります。

自転車に乗って買い物、映画、ウインドショッピング、友達と会ったり、仕事をしたり。コンピュータでもそれと同じようなことができます。ちがうところは、自転車は自分を自分の力で運びますが、コンピュータは家にいながら電話回線を通じて画面に目的のものを表示し、こちらからのメッセージを相手に届けることができます。これが「インターネット」とか「パソコン通信」といわれる「電子情報ネットワーク」です。(図1)

コンピュータは「やる気」さえあれば、最初は転ぶかもしれませんが、楽々「乗りこなす」ことができるはずです。

 

キーボードからマウスへ

コンピュータというとキーボードを打たなければならない。「アイウエオ」も「ABC」もバラバラにならんでいて覚えきれないと思う方もいらっしゃるかもしれません。確かに文字を打つときはキーボードを使いますが、ほとんどの操作を最近ではマウスという入力機器で行うことができます。画面に表示される絵にマウスで矢印をあわせてそれを「クリック(押す)」するだけで、文章を書いたり、絵を描いたり、インターネットやパソコン通信に接続できます。すでにワープロを使っている人ならば、違和感なくパソコンを操作することができるでしょう。(図2)

 

コンピュータは可能性を開く

全身性のマヒを持つ重度身体障害者が、パソコンで絵を描いて、パソコン通信で私に送ってくれました。いままで、彼はマヒのために一生絵を描くことができないと思っていたそうです。しかし、パソコンの描画ソフトで自画像を描くことができました。このようにパソコンは可能性を開く道具でであり、福祉機器であるともいえます。そして彼にとってはコミュニケーションをとる大切な道具となりました。(図3)

それでも、自転車に乗るには平衡感覚(バランス)と練習が必要だったように、コンピュータにも根気と最低限の練習が必要です。

これから何回かにわけて「インターネット」「パソコン通信」についてお話しして行くわけですが、一つは「パソコンを使うには」、二つめはパソコンを使って「こんなことができます」という視点で連載をしたいと思います。

 

コンピュータで創る

ではコンピュータでなにができるか。電子計算機ですから計算が得意です。縦横計算を自動的におこなうソフトがあり、その結果を自動的にグラフにます。

多く使われるのは、文書作成でしょう。いったん文書を作って、あとで書き足したり、削除したり、移動させたり文書の推敲に便利です。前に作った文を呼び出して加工してちがうものにすることもできます。

絵を描くこともできます。先ほどの障害を持つ人の絵は、円、四角、三角などを組み合わせて書いてあります。図の絵は小学校三年生の作品で、マウスで顔を塗りつぶすようにして書き、そのまわりにはUFOやかぼちゃなどのスタンプが押されています。文書作成と同じようにやり直しが何回もできますので、やっているうちに新しいアイディアがわいてきます。また、いったん描いた絵をぼかして「モネ」のようにしたり、「ゴッホ」のようにするソフトもあります。(図4)

コンピュータで音楽をしてみましょう。ワルツにするか、ジャズにするかリズムを選び、あとはギターのコードをいれると、カラオケを自動的に生成してくれるソフトがあります。これにメロディをいれると作曲、編曲が完成です。

さらに、ビデオを編集している人もいます。こうなると、コンピュータは創造活動支援機とでもいえましょうか。

 

コンピュータでコミュニケーション

なにかを創ると、発表したくなるのはきっとだれでも同じでしょう。

しかし、障害を持っていたり、高齢者の中には発表する場に出会うことがむずかしい方もいらっしゃるでしょう。それは、体が動かないために外にでられない、まわりに友達がいないとさまざまです。

この場合、家にいながらコンピュータの窓を開けるとそこが外になる「インターネット」「パソコン通信」が便利です。家から一歩もでることもなく、あなたの作品はコンピュータから電話回線を通って世界に発信されるのです。「文」や「絵」や「音楽」を発信させることができるのがインターネットの「ホームページ」です。あなたの創った作品を見た誰かが、「電子メール」でその感想をあなたのコンピュータに届けることもあるでしょう。そして、誰かのホームページを見ることも、感想を送ることもできます。他の人の情報を見て刺激をうけることもあるでしょう。メールをくれた人にあってみたいと思って実際に出かける。こうやって、あなたはコンピュータを使ってネットワークを広げ、もう一つの世界が広がることでしょう。

それでは、次回「インターネット」「パソコン通信」をもう少しくわしく見てみましょう。